サヨリのエラにいる寄生虫「サヨリヤドリムシ」の生態は?生活環は?

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ウオノエ科寄生虫のなかで特に有名なのは、タイノエとサヨリヤドリムシでしょう。特に、サヨリはファミリーフィッシングの対象魚なので、最も目にする機会が多いウオノエ科寄生虫といえるのではないでしょうか。しかし、専門家向けにはともかく、この寄生虫について一般向けにまとめられているものは殆どありません。そこでいくつかの論文から、この寄生虫についてまとめてみました。

「サヨリヤドリムシ」は2種いる?

実は、サヨリに寄生するウオノエ科寄生虫は2種いるとされています。学名で書くと、Mothocya parvostisMothocya sajoriです*1

皆さんは、この2種の違いはどこだと思いますか?論文に書かれている違いとしては、下の表の通りです*1

ただし…表を見て分かる通り、この2種の違いは非常に曖昧です。このためこの2種は、本当は同じ生物種なのではないか、との説を唱える研究者も少なくありません。近いうちに、この2種の区別はなくなるかもしれませんね。

また、正確には「サヨリヤドリムシ」という名前(和名)はM. sajoriを指します。しかし、研究者によっては、(この2種がM. parvostisに統一されることを見越して)M. parvostisをサヨリヤドリムシと読んでいます。

このサイトでは、この2種をまとめて「サヨリヤドリムシ」と呼び、区別する際には学名を使っていきます。

このサイトでは、この2種をまとめて「サヨリヤドリムシ」と呼び、区別する際には学名を使っていきます。

サヨリヤドリムシの生活史(ライフサイクル、life cycle)

このサヨリヤドリムシはどのような生活をしているのでしょうか。その一生に迫ってみたいと思います。

まず、みなさんがご存知の通り、サヨリヤドリムシはサヨリのエラに寄生しています。これが成体(大人)です。また、黒っぽくて体が真っ直ぐなのがオス、白っぽくて体が曲がっているのがメスです。

サヨリへの寄生

このメスはお腹に「育房」という袋を持っており、この中で卵や幼体を育てます。幼体は十分に育つと、育房からハッチアウトして海中に泳ぎだします。この幼体(マンカ)は活発に泳ぎ回って、寄生するためのサヨリを探します。そして、運良くサヨリに出会うことのできた寄生虫幼体は、サヨリの体表に貼り付いて寄生します*2

マンカ幼体

移動と性転換

サヨリへの寄生に成功した寄生虫は、しばらく体表にとどまり、すべての寄生虫がオスとなります。しばらくすると一部の寄生虫がサヨリのエラへと寄生場所を移します。このようにして、エラへの寄生に成功した個体は、性転換してオスからメスへと変化します*2

一方、体表に残った寄生虫はそのままオスとして暮らします (ただ、実際にサヨリを釣るとオスとメスが、同じサヨリの左右のエラに1匹ずつ寄生しているので、これは間違っているかもしれません)。しかし、交尾の際にはオスも一時的にエラに侵入して、そこにいるメスと交尾するようです*2

そして、交尾の後しばらくすると、また次世代の寄生虫幼体が生まれるのです。

以上が現在知られている生活史ですが、分かっていない点もたくさんあります。例えば、寄生虫の寿命はどれくらいなのか、一生で何回産卵できるのか、産卵期は決まっているのかなどです。実は、ウオノエ科寄生虫の研究は、日本ではあまり盛んでは無いため、分かっていない事が多いのです。面白い生き物なのに少しさみしく思います。

さて、サヨリヤドリムシに対する印象が変わったでしょうか。初見では気持ち悪いと感じた方も、詳しく知ると可愛く見えてくるかもしれませんよ。

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引用文献

*1 Bruce NL (1986) Revision of the isopod crustacean genus Mothocya Costa, in Hope, 1851 (Cymothoidae: Flabellifera), parasitic on marine fishes. J Nat Hist 20: 1089–1192

*2 Inoue M (1941) On sexuality in Cymothoidae, Isopoda Ⅱ Irona melanosticta Schoedte & Meinert parasitic in the branchial cavity of the halfbeak, Hyporhamphus sajori (Temminck & Schlegel). Journal of science of the Hiroshima University, series B,Div. 1 9: 219–238, 1 pl

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