寄生虫ウオノエがついた魚は食べる?食べられる?

このサイトではウオノエについてご紹介していますが、多くの方は食材として魚と出会いますよね?その場合、ウオノエが寄生した魚が食べられるのか、が一番気になることだと思います。今回は、ウオノエと絡めて、魚の寄成虫と食品について紹介したいと思います。

寄生された魚は食品として問題ない

まず、ウオノエが寄生していたとしても、その魚を人間が食べることに関しては全く問題ありません。実は、食用の魚であっても、ほとんどが何らかの寄生虫の寄生を受けています。しかし、人に害をなす寄生虫は極稀なのです。

人に被害を与える魚の寄生虫としては、サンマやスルメイカに寄生するアニサキスや、マグロに寄生するクドアがあげられます。ではこれらの寄生虫と、ウオノエなどの健康被害を及ぼさない寄生虫は何が違うのでしょうか。

アニサキス

クドア

アニサキスなどの寄生虫が人間に被害を及ぼすメカニズムを見てみましょう。まず、食品と一緒に、寄生虫が人間の体内に生きたまま侵入します。しかし、アニサキスなどの寄生虫にとって、人間は本来の宿主ではありません。彼らは「ここは自分の居場所ではない」と分かるので、居心地のいい場所を求めて、胃腸を食い破り、暴れまわります。

この結果、痛みなどの健康被害が引き起こされるのです。多くの魚類寄生虫は、人間の体内に入った時点で死んでしまうので、健康被害が起こることは少ないのです。人間の体に入っても、しばらくは「生きていられてしまう」ごく少数の寄生虫だけが、健康被害を引き起こすのです。

ウオノエは外部寄生虫なので、普通は寄生虫本体を人間が食べてしまうことはおこりません。当然、何かの拍子に、生きたまま人間の体内に入ったとしても、胃で消化されて死んでしまうでしょう。このため、ウオノエが寄生していた魚を食べることによって、健康被害がおこることは無いのです。

寄生虫本体は?

もちろん一般的には、食用ではありませんが、ウオノエそのものを食べることはできるのでしょうか。ウオノエ本体を食べた事による健康被害は報告されていませんが、試される方は自己責任でお願いします。

魚にとっては?

人間には健康被害を与えないウオノエですが、魚にとってはどうでしょうか。ウオノエは基本的に魚を殺すことはありませんが、やはり全くの無害ではありません。ウオノエは寄生した魚から吸血して栄養を得るので、魚の貧血や栄養障害、発育障害を引き起こすことがあり、魚の養殖業では無視できない問題となっています*1。また、ウオノエは寄生する際に魚に傷をつけるので、その傷から感染症にかかるなど、間接的な害もあたえます*2

ウオノエは人に健康被害を与えないとはいえ、魚の養殖業者にとっては、悩みのタネとなりうるのです。

参考文献

*1山内健生(2016) 日本産魚類に寄生するウオノエ科等脚類. Cancer, 25: 113–116.

*2長澤和也、河合幸一郎 (2019) 長崎県沿岸域のマダイ当歳魚に寄生していたタイノエ(等脚目ウオノエ科)とその最小個体の記録. Nature of Kagoshima, 46: 133–136.

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